万葉集入門
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現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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夏の雑歌

藤原夫人(ふぢはらのぶにん)の歌一首〔明日香清御原宮(あすかのきよみはらのみや)に天の下知らしめしし天皇の夫人なり。字(あざな)を大原の大刀自(おほとじ)といへり。即ち新田部皇子(にひたべのみこ)の母なり〕


霍公鳥(ほととぎす)いたくな鳴きそ汝(な)が声を五月(さつき)の玉にあへ貫(ぬ)くまでに

巻八(一四六五)
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霍公鳥よそんなに鳴かないでおくれ。おまえの声を端午の薬玉に混ぜて緒に通すまでは
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この歌は藤原夫人(ふぢはらのぶにん)の詠んだ一首。
この歌から万葉集巻八の夏の雑歌の部に入ります。

題詞に「明日香清御原宮(あすかのきよみはらのみや)に天の下知らしめしし天皇」とあるのは天武天皇のことで、つまり藤原夫人は天武天皇の夫人のことですね。
字(あざな)は大原の大刀自(おほとじ)、名は「五百重娘(いほえのいらつめ)」といい藤原鎌足(ふぢはらのかまたり)の娘で、新田部皇子(にひたべのみこ)の母でもあります。
万葉集巻二の天武天皇と藤原夫人が交し合った歌〔巻二:一〇三 と 巻二:一〇四〕も有名なのでまたそちらのほうも参考にしてみてください。

この歌はそんな藤原夫人の詠んだ一首ですが、「霍公鳥よそんなに鳴かないでおくれ。おまえの声を端午の薬玉に混ぜて緒に通すまでは」と、霍公鳥に語り掛けた内容となっています。
「霍公鳥(ほととぎす)」は夏に日本にやって来る渡り鳥。

「五月(さつき)の玉」とは、端午の節句(五月五日)に柱などに飾る「薬玉(くすだま)」のことで、錦の袋に沈香やヨモギなどを入れて菖蒲や橘の実を付け五色の紐を垂らした厄除けの飾り物のこと。
霍公鳥は端午の節句の頃に飛来して鳴き出すので、万葉の時代にはこの「端午の薬玉」に霍公鳥の声を混ぜる意味の「声を玉に貫く」という表現が流行っていたようです。
(あるいはこの藤原夫人の歌が「声を玉に貫く」という表現を使った最初の一首だったのかも知れませんね)

そんな季節の訪れを告げる霍公鳥の声を厄除けの「端午の薬玉」に混ぜて飾りたいとの、夏の雑歌の冒頭にふさわしい季節感のある一首となっています。


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万葉集巻八の他の歌はこちらから。

万葉集巻八


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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