万葉集入門
万葉集入門
現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

スポンサード リンク


礫(たぶて)にも投(な)げ越しつべき天(あま)の川(がは)隔てればかもあまた術(すべ)無き

右は、天平元年七月七日の夜に、憶良、天の川を仰ぎ見たり。〔一に云はく、師(そち)の家の作〕

巻八(一五二二)
-----------------------------------------------
石の礫でも投げれば届くだろう天の川なのに隔てていればどうすることも出来ないよ
-----------------------------------------------

この歌も先の巻八(一五二一)の歌と同じく、山上臣憶良(やまのうへのおみおくら)が七夕を詠んだ十二首の歌のうちのひとつで、巻八(一五二〇)の長歌につけられた反歌のうちのひとつ。
左注に「一に云はく、師(そち)の家の作」とあるのは、一説にこれらの巻八(一五二〇)の長歌からの三首が大宰師である大伴旅人の邸宅で詠まれたとされることを伝えています。
「礫(たぶて)」は「つぶて」のこと。

そんな「石の礫でも投げれば届くだろう天の川なのに隔てていればどうすることも出来ないよ」と、こちらも牽牛の立場に立ってわずかな距離であっても渡ることの出来ない天の川に隔たれている織女との恋の切なさを詠った一首となっています。

まあ、天の川が石の礫を投げて届くような距離なのかどうかはよくわかりませんが、天の宿命によって隔てられている牽牛と織女には近い距離であればあるほど逢えないもどかしさが募るばかりなのでしょうね。
そんな牽牛の心情をよく表している一首のようにも思います。

先にも紹介したようにこれらの歌は憶良が大宰府の大伴旅人の邸宅で詠んだとの説があるようですが、あるいは官人たちも集まった宴席での一首だったのでしょうか。
大宰府の官人には奈良の京や故郷に親や妻子を残してきている者も多く、愛しい人に逢いたくても逢えない七夕のこれらの歌は自分の境遇とも重なってたくさんの共感を得たのではないでしょうか。


スポンサード リンク


関連記事
万葉集巻八の他の歌はこちらから。
万葉集巻八


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

万葉集入門(トップページ)へ戻る

当サイトはリンクフリーです、どうぞご自由に。
Copyright(c) 2015 Yoshihiro Kuromichi (plabotnoitanji@yahoo.co.jp)


スポンサード リンク


欲しいと思ったらすぐ買える!楽天市場は24時間営業中

Amazon.co.jp - 通販