万葉集入門
現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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霞立(かすみた)つ天の川原に君待つといゆきかへるに裳(も)の裾ぬれぬ
巻八(一五二八)
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霞の立つ天の川原にあなたを待って行ったり来たりしているうちに裳の裾が濡れてしまいました
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この歌も先の巻八(一五二七)の歌などと同じく、山上臣憶良(やまのうへのおみおくら)が七夕を詠んだ十二首の歌のうちのひとつです。
歌の内容は「霞の立つ天の川原にあなたを待って行ったり来たりしているうちに裳の裾が濡れてしまいました」と、こちらは牽牛を待つ織女の立場に立って詠んだ一首ですね。
このころの憶良はすでにかなり高齢であったはずですが、織女のような若い女性の恋心を見事に代弁して詠っているのはさすがですよね。
この歌を含む巻八(一五二七)から巻八(一五二九)までの歌は、大伴旅人が大宰府から奈良の都に帰った翌年あたりに筑前国府(筑前国府は大宰府のすぐそばにあったようです)にひとり残された憶良が詠んだものと思われますが、きっとこれらの歌を詠みながら憶良は前年の旅人の館での七夕の宴を懐かしく思い出したことでしょう。
あるいは織姫が遠き対岸の牽牛を思う心情に、奈良の都の旅人を懐かしむ心が重なって感じられたりもしたのかも知れませんね。
そんないろいろなことを感じさせてくれる一首でもあります。
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万葉集巻八
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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