万葉集入門
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現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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鶉鳴(うづらな)く古(ふ)りにし郷(さと)の秋萩を思ふ人どち相見つるかも

巻八(一五五八)
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鶉の鳴くような故郷の秋萩を同じ心の者同士で共に眺めたことだなあ
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この歌は先の巻八(一五五七)の歌と同じく、丹比真人国人(たぢひのまひとくにひと)が明日香の里の豊浦寺(とゆらでら)を訪れたときの宴の席で詠まれた一首。

次の巻八(一五五九)の歌の後に付けられた左注によると、作者は豊浦寺の沙弥尼(さみに)の一人とのことです。
「沙弥(さみ)」は僧侶のことで、「沙弥尼(さみに)」は僧と尼か、あるいは尼のことでしょうか。

歌の内容は「鶉の鳴くような故郷の秋萩を同じ心の者同士で共に眺めたことだなあ」と、先の丹比真人国人の巻八(一五五七)の歌を受けて懐かしい人々と共に秋萩を眺めることの出来た喜びを詠っています。
この時、丹比真人国人の他にも奈良の京からやって来た付き添いの人々が多くいたようで、豊浦寺の僧侶や尼たちも懐かしい人々とのひさしぶりの再会を喜んだのでしょう。

共に眺めた秋萩を通してそんな喜びの心情がよく表れている宴の一首ですよね。


かつて豊浦寺があったとされる場所に建つ向原寺(奈良県明日香村豊浦)。



向原寺の境内からは豊浦寺の伽藍の遺構が発掘されていて、向原寺の住職さんに頼めば見学させてもらえます。
(見学時間は30分ほどで、住職さんが詳しく解説してくださいます。)



こちらが向原寺にある豊浦寺の伽藍の遺構。



向原寺の本堂に祀られている金銅観音菩薩立像。
昭和49年に盗難にあったそうですが、平成22年にオークションに出品されているところを発見され向原寺で買い戻されたそうです。



金銅観音菩薩立像(こちらは向原寺に展示されているパネル写真)。
この金銅観音菩薩立像は頭部のみが向原寺近くの難波池で発見され、体部分と光背を後に制作したとのこと。
お顔立ちからかなり古い時代の仏像であることが想像され、あるいは飛鳥時代の豊浦寺に祀られていた仏像のひとつであったのかも知れませんね。

豊浦寺は日本に仏教を取り入れようとした蘇我稲目(そがのいなめ)がはじめて仏像を祀った地ですが、その後、国内に疫病が流行したことから排仏派の物部守屋(もののべのもりや)が疫病は仏像を祀ったことに日本古来の神々が怒った祟りだと主張して、天皇の許可を得て豊浦寺の仏像を難波池に流して伽藍を焼き払ってしまいました。

物部守屋が豊浦寺の仏像を流した難波池は大阪にある堀江(守屋は仏像が海を渡って大陸に帰れるように海に繋がっている大阪の難波池に仏像を流したようです)のことで、この金銅観音菩薩立像の頭部が見つかった向原寺側の難波池とは別の場所ですが、あるいはこの金銅観音菩薩立像は守屋によって伽藍が焼き払われた時にどこかの建物内に隠されていた仏像のひとつだったのかも知れませんね。


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万葉集巻八


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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