万葉集入門
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現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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秋萩は盛りすぐるを徒(いたづ)らに插頭(かざし)に插(さ)さず還(かへ)りなむとや

右の二首は、沙弥尼等(さみにども)

巻八(一五五九)
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秋萩は盛りを過ぎようとしているのに空しく插頭にすることもなく帰ろうとされるのですか
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この歌も巻八(一五五七)の歌などと同じく、丹比真人国人(たぢひのまひとくにひと)が明日香の里の豊浦寺(とゆらでら)を訪れたときの宴の席で詠まれた一首。
左注に「右の二首は、沙弥尼等(さみにども)」とあるように、作者は先の巻八(一五五八)の歌と同じく豊浦寺の沙弥尼(さみに)の一人とのこと。
ただ、内容からしてこの歌はどうやら尼の作のようですね。

歌の内容は「秋萩は盛りを過ぎようとしているのに空しく插頭にすることもなく帰ろうとされるのですか」と、この歌もまた丹比真人国人が萩の花の散るのを惜しんで詠んだ巻八(一五五七)の歌を受けて、せめて萩の花を摘み取って插頭にして帰ってくださいとの一首となっています。
植物を插頭にして頭に飾る行為はもともとはその植物の生命力を身体に取り込む意味を持っていましたが、丹比真人国人たちがいた奈良時代になるとその意味合いも薄れて純粋に風流の行為となっていたものと思われます。

同時に、この歌は萩の花を女性に譬えて、尼が自分を妻に娶って連れて帰ってほしいと丹比真人国人に訴えた宴席の場での戯れの恋歌でもあったのでしょうね。
そんな豊浦寺での賑やかな宴の夜が想像されるなんとも魅力的な一首となっています。


萩の花。


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万葉集巻八


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万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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