万葉集入門
現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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藤原朝臣八束(やつか)の歌二首
此処(ここ)にありて春日(かすが)や何処雨障(いづくあまつつみ)出でて行かねば恋ひつつぞ居(を)る
巻八(一五七〇)
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ここにいると春日山はどこにあるのだろうと思ってしまう。雨が降って外に出て行けないので恋しく思っているよ
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この歌は藤原朝臣八束(ふぢはらのあそみやつか)の詠んだ二首の歌のうちのひとつ。
藤原八束は、藤原四兄弟の房前(ふささき)の三男。
八束は藤原仲麿(ふぢはらのなかまろ)に才能を妬まれたとの噂もあるほどに非常に優秀な人物であったようで、また藤原氏の一族でありながらめずらしく大伴家持とも親交があったようです。
家持の父の大伴旅人が晩年に藤原房前に近づいて行ったらしき形跡(巻五:八一〇などを参照)もあるので、あるいはその関係で家持と交流を持ち互いに心を通じるものを感じたのかも知れませんね。
そんな藤原八束の詠んだ一首ですが「ここにいると春日山はどこにあるのだろうと思ってしまう。雨が降って外に出て行けないので恋しく思っているよ」と、雨が続いて外に出て行けない日々の中で春日山を恋しく思う心情を詠っています。
「此処にありて〜や何処」といった表現は、巻三(二八七)の歌や巻四(五七四)の歌などにも見られ、当時の慣用句のひとつだったのでしょう。
もちろん、実際に春日山のある位置がわからないという意味ではなく、これは春日山に思い巡らす表現として使われているわけですね。
そんな時雨の季節の塞ぎがちな心情を、春日山への思いを通して詠った静かな魅力の一首のように思います。
春日山。
奈良の京の東の山塊の、若草山や御蓋山、花山の三峰のことを合わせて万葉集の時代には春日山と言ったようです。
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万葉集巻八
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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