万葉集入門
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現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
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(解説:黒路よしひろ)

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冬の雑歌(ざふか)

舎人娘子(とねりのをとめ)の雪の歌一首

大口(おほくち)の真神(まがみ)が原に降る雪はいたくな降りそ家もあらなくに

巻八(一六三六)
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大口の真神が原に降る雪はひどく降らないでほしい。家もないというのに
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この歌は舎人娘子(とねりのをとめ)が雪を詠んだ一首です。
この歌から、万葉集巻八の冬の雑歌の部に入ります。

舎人娘子については詳しいことは不明ですが、舎人皇子(とねりのみこ)を傅育していた舎人氏の娘で宮中の女官だったようで、巻二に舎人皇子(とねりのみこ)との贈答歌(巻二:一一七 〜 巻二:一一八を参照)があることから、飛鳥時代から奈良時代にかけての人物であると思われます。
(この歌はおそらく飛鳥時代に詠まれたもの。)

「大口(おほくち)の真神(まがみ)が原」は、奈良県明日香村の飛鳥の地のことで、「真神」はオオカミ、「大口」はオオカミの大きな口を意味する言葉です。
そんな「大口の真神が原に降る雪はひどく降らないでほしい。家もないというのに」と、真神が原に降る雪にこれ以上降り積もらないでほしいと詠い掛けた一首ですね。
飛鳥の真神が原の地は飛鳥宮の中心地であり家がたっていないはずはないので、「家もあらなくに」はこの場合は舎人娘子の家が側にはないとの意味でしょうか。
あるいは雪の歌を詠む時の呪術的な慣用句として広く使われていた言葉をそのまま用いただけなのかも知れませんが…

外出中に降りだした雪に、せめて家に帰るまではひどくは降らないでほしいとの願いを込めた祈りの一首といえるでしょうか。


奈良県明日香村の飛鳥民俗資料館側にあるこの歌の歌碑。
歌碑の後ろ一帯が「真神が原」です。



添え碑。



奈良県明日香村にある飛鳥寺。
「真神が原」とはこの飛鳥寺の南一帯の土地のこと。



飛鳥寺の境内にある「真神が原」の解説。



真神が原。


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万葉集巻八の他の歌はこちらから。
万葉集巻八


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万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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