万葉集入門
現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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太上天皇(おほきすめらみこと)の御製歌(おほみうた)一首
はだすすき尾花逆葺(さかふ)き黒木もち造れる室(やど)は万代(よろづよ)までに
巻八(一六三七)
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はだすすきの尾花を逆さに葺いて黒木で作った家は永遠であれ
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この歌は太上天皇(おほきすめらみこと)の御製歌です。
太上天皇は先の天皇のことで、この場合は元正天皇(げんしやうてんわう)のこと。
そんな元正天皇の御製歌ですが「はだすすきの尾花を逆さに葺いて黒木で作った家は永遠であれ」と、新たに建てられた家を讃える内容となっています。
この歌の次の巻八(一六三八)の歌の後の左注によると、これらの二首は左大臣の長屋王(ながやのおほきみ)が佐保に建てた作宝楼(さくほろう)という屋敷に太上天皇と聖武天皇が行幸されて、宴を催された時のもののようですね。
(この作宝楼は、「長屋王の変」の舞台となった奈良市の屋敷とは別の屋敷。)
「はたすすき」は「旗ススキ」で、ススキのこと。
「尾花(をばな)」はススキの穂の部分を主にこう呼び、ススキは古代から呪術的な力を持つ植物と考えられていたようでそれを屋根に葺くのは繁栄を願う意味もあったようです。
(ススキの呪術性に関してはその名の語源であるともいわれる「スクスク立つ木」なども関係しているように思われます。)
「黒木」は皮がついたままの材木のことですが、そんな「尾花を逆さに葺いて黒木で作った家は永遠であれ」との、なんとも目出度い祝いの呪術歌と言えるでしょう。
「尾花(をばな)」はススキの穂の部分。
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万葉集巻八
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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