万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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大伴宿禰田主(たぬし)の報(こた)へ贈れる歌一首

遊士(みやびを)にわれはありけり屋戸貸(やどか)さず還ししわれそ風流士(みやびを)にはある

巻二(一二七)
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そうだったのですね。では僕は風流人だったのです。女性を引き入れたりせずに帰した僕こそ真の風流人、紳士だったのです。
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この歌は先の巻二(一二六)で石川女郎(いしかはのいらつめ)から、昨夜自分を家に引き入れもしないで帰したことをからかって贈られた歌に、大伴宿禰田主(たぬし)が返して贈った一首。
石川女郎は「みやびを」を恋愛の情緒を理解する人物の意味で詠みましたが、田主のほうはこれに対して「みやびを」のもう一つの意味である紳士として返歌を返します。
「そうだったのですか、僕はみやびをだったのですね。女性に手を出さず帰した僕こそ真の風流人(紳士)でだったのです。」と…
「遊士」や「屋戸貸さず」、「風流人」など、石川女郎が使った言葉をそのまま反対の意味や違った意味で返す短歌の技法としてはなかなかに上手い歌ですが、ただ、こう詠われては石川女郎をはしたないと言っているようなものですし女性に対する返歌としては下手を打ったようにも思います。
ここは女郎の理不尽な怒りに対しても彼女の顔を立てて詠い返せばあるいはこの後の展開もまた変わっていたのかも知れませんが…
そういう意味では大伴宿禰田主はやはり真の風流人ではなく、恋愛の機微を理解できない「おその風流人(ダメな男)」であったのかも。

まあ、あるいは田主は、自分から押しかけてくるような女性には興味がないためにあえてこのように返したのかも知れませんね^^;

この石川女郎と大伴宿禰田主が交わした二首の歌は、「風流人(みやびを)」という言葉とその意味が感覚として理解できない現代人にはなかなか面白味が分かりにくいかも知れませんが、歌そのものよりもむしろ二人の間の出来事を歌を通して楽しむ歌物語として楽しめばよいかと思います。
千年以上も前の夜に起こった恋愛に関する行き違いが、今の時代にまでありありと想像できるのは万葉の時代の人々の歌の力のすばらしさではないでしょうか。

この巻二(一二七)の歌に対してさらに石川女郎は田主に返歌を贈りますが、それについてもまた次回、巻二(一二八)の歌で…


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万葉集巻二


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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