万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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石川女郎(いしかはのいらつめ)大伴宿禰田主(たぬし)に贈れる歌一首〔即ち佐保大納言大伴卿の第二子、母を巨勢朝臣(こせのあそみ)といふ〕

遊士(みやびを)とわれは聞けるを屋戸貸(やどか)さずわれを還せりおその風流士(みやびを)

巻二(一二六)
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風流な色男と聞いていたのに家に引き入れもしないで私を帰してしまうなんてがっかりな風流人さんでしたわ。
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この歌は石川女郎(いしかはのいらつめ)が大伴宿禰田主(たぬし)に贈った一首。
この石川女郎は、巻二(一○七)巻二(一○八)の歌で大津皇子と歌を交し合った石川郎女(名前の表記は違いますが)と同一人物であるとも言われていますが、正確なところは分かっていません。

大伴宿禰田主は容姿端麗で風流を解する人物として人々に噂される男性でした。
そんな大伴宿禰田主に密かに恋心を抱いた石川女郎は、想いを抑えられなくなったある日の夜に、賤しい老婆の姿に扮して鍋を手に「東隣の貧しい女ですが、火をお借りできませんか?」と田主の家を訪れます。
恋心を抑えられなくなって自分から田主との関係を持とうと近づいて行ったわけですね。
しかし田主は暗かったために女郎の姿がよく見えず、ほんとうに火を借りに来ただけの老婆だと思い火を貸してそのまま帰してしまいます。

翌朝、自分から求婚しようとしたことを恥じ、想いが遂げられなかったことを恨んで女郎はこの歌を田主に贈ります。
「恋愛の情緒を解する色男と聞いていたのにがっかりな風流人でしたわ」と…

「風流人(みやびを)」とはそれ以前の「ますらお」に代わって、遊びや恋愛の情緒を理解する理想の男性像のことです。
他にも「紳士」などの意味もあり、文芸や遊び全般に通じた今の時代でいう「風流な人」とさほど大差はないかと思います。

まあ、暗くてほんとうに火を借りに来ただけの老婆と思ってしまった田主にしてみればこんなふうに恨み言を言われても辛いものがあったでしょうが、せっかく勇気を出して自分から男性のもとを訪れたのに気付いてもらえなかった女郎のやるせない思いもよく分かる気がします。
せめて、「ダメな男ね」と嫌みのひとつも言ってやりたくなったのでしょうね。

これに対して大伴宿禰田主も女郎に返歌を贈りますが、それについてはまた次回、巻二(一二七)の歌で…


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万葉集巻二の他の歌はこちらから。
万葉集巻二


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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