万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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同じ石川女郎のさらに大伴田主中郎に贈れる歌一首

わが聞きし耳に好(よ)く似る葦(あし)のうれの足痛(あしひ)くわが背勤(せつと)めたぶべし

巻二(一二八)
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私が噂に聞いたそのままに葦の若芽のように足を引きずってらっしゃったあなた、どうぞお大事にね。
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この歌も大伴宿禰田主(たぬし)が返歌として石川女郎に贈った先の巻二(一二八)の歌に、さらに石川女郎が贈り返した歌です。
昨夜、大伴宿禰田主(たぬし)の家を訪れたにもかかわらず自分を家に引き入れもしないで帰したことをからかって「ダメな風流人(恋の上手)ですね」と贈った女郎の巻二(一二六)の歌。
それに対して田主は、巻二(一二七)の歌で「女性に手を出さずに帰した僕こそ風流人(紳士)なのです」と別の意味の風流人として返します。

この巻二(一二八)の歌は、遊び心としては上手な歌の返しではあるけれど女心をまるで考えない田主の巻二(一二七)の返歌に怒った女郎の最後の嫌みといったところでしょうか^^;
「みんなが噂してた通りに足を引きずってらっしゃったみっともない貴方、どうぞお大事にしてくださいね。」と、「田主」という名から田んぼの主である歩けない案山子に掛けて田主を貶めたわけです。
表面上は「お大事に」と労わりながらも、「足を引きずって歩けない案山子ですね」と相手の悪口を言うのは現代人にも通じる感覚ですね。
ここまでくるともうほんとにただの喧嘩ですが、不幸にも自分に想いを寄せる相手への対応を誤ったために男女ともに傷つく結果になってしまうのは万葉の時代から現代にいたるまでなにも変わっていないのかも…

もとはと言えば自分から男の家を訪ねてきたふしだらな貴女が悪いのに…と大伴宿禰田主も言いたかったでしょうが、ここまで怒ってしまった女性には何を言っても無駄なことはよく知っていたのでしょう。
この歌に対する大伴宿禰田主の返歌はもちろんありませんでした。


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万葉集巻二


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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