万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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額田王の和へ奉れる歌一首 大和の都より奉り入る
古(いにしへ)に恋ふらむ鳥は雀公鳥(ほととぎす)けだしや鳴きしわが念(おも)へる如(ごと)
巻二(一一二)
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昔を恋しく思って鳴くその鳥は霍公鳥(ホトトギス)でしょう。たしかに鳴いていることでしょう。私が昔を思って泣いているのと同じように。
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この歌は先の弓削皇子(ゆげのみこ)が額田王(ぬかたのおほきみ)に贈った巻二(一一一)の歌に、額田王が返した返歌。
弓削皇子の贈った歌は吉野宮の空を鳴きながら渡り行く不如帰が「昔を懐かしんで鳴いているのか」と天武天皇の在世当時の昔を偲ぶ想いを詠んだ一首でしたが、これに対して額田王は「たしかに鳴いていることでしょう。私が昔を思って泣いているのと同じように。」と皇子の想いに共感して返します。
この歌が詠まれた時期ははっきりとしませんが天武天皇の崩御後、持統天皇行幸時ということですので大津皇子が謀反の疑いを掛けられて謀殺された後のことでしょう。
巻一(二七)の歌のところでも解説しましたが、天武天皇の在世時に草壁皇子や大津皇子たち六人の皇子は吉野で兄弟が決して争わぬことを誓い合いました。
にもかかわらず天皇が亡くなるとすぐに後継者問題が起こりやがて大津皇子は殺害されてしまいます。
吉野の会盟の場には弓削皇子は居ませんでしたが、それでも吉野の宮に立った時、弓削皇子の胸中にはこの時の盟約のことが深く思い出されたことでしょう。
自分の子である皇子同士の争いを天武天皇の魂がどんなに悲しんでいることかと…
この歌の四句目の「けだしや」には非常に強い推量の意味がありますが、おなじく額田王の嘆きも単純に天武天皇の昔を懐かしむだけのものではなく天皇崩御後のいきさつに天皇の魂が「もちろん鳴(泣)いているだろう」との強い共感があったものと思います。
万葉集を編集者といわれる大伴家持がこの弓削皇子と額田王の二首を大津皇子事件関連の歌の後に並べた意図もそのあたりにあるのかも知れませんね。
明日香村野口の植田城跡古墳にあるこの歌の歌碑。
額田王の墓を参照。
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