万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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反歌一首

石見(いはみ)の海打田(うつた)の山の木の際(ま)よりわが振る袖を妹(いも)見つらむか

右は、歌躰同じといへども句々相替れり。困りてここに重ねて載す。

巻二(一三九)
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石見の海、打田の山の木々のあたりから私が振っている袖を妻は見ているだろうか
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この歌も巻二(一三八)の長歌につけられた反歌で、柿本人麿(かきのもとのひとまろ)が赴任先の石見の国(現在の島根県の西半分)から大和へ戻る際に石見の現地妻を思って詠んだ一首。
長歌のほうが巻二(一三一)の歌の異伝であるのと同じく、この反歌もまた巻二(一三三)の歌の異伝となっていて語句がわずかに変化している以外は内容も同じものとなっています。

おそらくは長歌と同じく伝誦の過程で享受者などによって語句が替えられたのだと思われますが、歌の後の左注にも「困りてここに重ねて載す。(これはこの短歌だけでなく長歌のことも含めての意味だと思われます)」と書かれているのが面白いですね。

この短歌だけ見ても、もととなった歌であろう巻二(一三三)の歌と、そこから変化した巻二(一三四)、そしてこの巻二(一三九)と三種類の語句の違う歌があるわけですが、それだけこの歌が人々の間に広く伝誦されていたのだろうことが想像できます。
きっと人麿と同じく大和から石見の国に派遣されていた官人が大和へ帰るときなどに妻を思う言霊の歌として、人麿のこの歌を代々伝誦し旅の途中で唱和したのでしょう。
旅の鎮魂の歌として大切なのは語句そのものではなくそこに込められた妻への「思い」であり、そのことの前には歌の語句が多少変わってしまうことなどはさしたる問題でなかったのかも知れませんね。

そう考えるとこれらの異伝も、単なる文学作品ではなく言霊としての鎮魂の力を宿した歌ゆえの変化だということに気づかされるはずです。


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万葉集巻二


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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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