万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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倭文手纏(しつたまき)数にも在(あ)らぬ身には在(あ)れど千年(ちとせ)にもがと思ほゆるかも
去(い)にし神亀二年に作れり。ただ、類(たぐひ)を以ちての故に、更慈※1(またここ)に載す。

天平五年六月丙申(へいしん))の朔(つきたち)にして三日戊戌(ぼじゆつ)の日に作れり

※1:「慈」は原文では「玄」+「玄」。

巻五(九〇三)
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倭文織りの手巻のように大した価値もない命ではあるけれど千年でも生きたいと思われることだ
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この歌も巻五(八九八)の歌などと同じく、山上憶良(やまのうへのおくら)が老いて病を重ねる自身の身を嘆いて詠んだ七首の歌のひとつで、巻五(八九七)の長歌に付けられた反歌のうちのひとつ。
「倭文(しつ)」は古代の織物で「手纏(たまき)」は手に巻く装飾具のこと。

歌の後の記述によるとこの歌は神亀二年に作ったものを同類の歌ということでここにまとめて載せたとあります。
たしかに歌の内容は「倭文織りの手巻のように大した価値もない命ではあるけれど千年でも生きたいと思われることだ」と、長寿を願う気持ちが詠われていて、先の巻五(九〇二)の歌とも非常によく似た内容となっていますね。
「千年でも生きたい」との思いは、憶良に限らず現代を生きるわれわれでも同じですし、充分に共感できる願いですよね。

ただ、左注にはこれらの歌を詠んでまとめたのは天平五年六月三日とあり、その願いも空しくこのすぐ後に山上憶良はその生涯を終えることになったようです。
まあ、そのあたりについてはまた巻六などの憶良の歌の解説のときにでも書かせてもらいますね。

以上、山上憶良が老いてまた病を重ねる自身の身を嘆いて詠んだ七首の歌の解説でした。


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万葉集巻五の他の歌はこちらから。
万葉集巻五


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価637円〜〜1145円(税別)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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