万葉集入門
現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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茜(あかね)さす日並(ひなら)べなくにわが恋は吉野の川の霧に立ちつつ
右は、年月審(つばひ)らかならず。ただ、歌の類(たぐひ)を以(も)ちてこの次に載(の)す。或る本に云はく「養老七年五月、吉野の離宮(とつみや)に幸(いでま)しし時に作る」といへり。
巻六(九一六)
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茜に色づく日々を多く重ねたというわけでもないのに私の恋心は吉野の川の霧のように立ち上っています
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この歌も先の巻六(九一五)の歌と同じく、車持朝臣千年(くるまもちのあそみちとせ)の詠んだ巻六(九一三)の長歌に付けられた反歌として、巻六(九一四)の歌が収録されている本とは別の本に反歌として収録されている歌のうちのひとつ。
左注の「右」とは巻六(九一三)の長歌からこの巻六(九一五)の歌まですべてを指し、これらの歌が先の笠金村の巻六(九〇七)の歌などと同じ吉野を讃えた歌であることからその次に収録したとあります。
また、或る本の記述にはこれらの歌が笠金村の歌と同じく養老七年五月の元正天皇の吉野離宮行宮の際のものであるとも記載されています。
肝心の歌の内容は、「茜に色づく日々を多く重ねたというわけでもないのに私の恋心は吉野の川の霧のように立ち上っています」と、吉野に来てまだ数日なのに都に残してきた恋人を思う気持ちが湧き上がって消えない心情を吉野川の霧に譬えて詠んだ一首ですね。
「茜さす」は、「日」に懸る枕詞。
この歌もどちらかと言えば女性の立場で詠まれた歌のように感じられ、あるいはこれも車持千年が吉野での宴の席で女性の立場に立って詠んだ戯れ歌を、後の世におなじ千年の歌である巻六(九一三)の長歌の反歌として編集されたものなのかも知れませんね。
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万葉集巻六
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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