万葉集入門
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現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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吾妹子(わぎもこ)が形見の合歓木(ねぶ)は花のみに咲きてけだしく実(み)にならじかも

巻八(一四六三)
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あなたの形見の合歓木は花ばかり咲いてきっと実にはならないのでしょう
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この歌も先の巻八(一四六二)の歌と同じく、紀女郎(きのいらつめ)が贈った巻八(一四六〇) などの歌に大伴宿禰家持(おほとものすくねやかもち)が返して贈った二首の歌のうちのひとつ。

巻八(一四六一)で紀女郎が「昼は咲いて夜は恋いつつ眠る合歓木(ねむのき)の花をあるじだけが見てよいものだろうか。お前も見なさいな。」と、合歓木の花に添えて歌を贈ったのに対して、こちらでは家持が「あなたの形見の合歓木は花ばかり咲いてきっと実にはならないのでしょう」と返しています。
合歓木は通常は花が散った後に鞘に入った豆状の実を付けるのですが、これはつまりは、あなたをいくら恋しく思っても実らない恋なのではないかと、合歓木に恋心を譬えて問いかけている訳ですね。

「形見(かたみ)」は相手を偲ぶ品で、万葉の時代には相手の生死は関係なく形見と呼んだようです。
まあ、これらの紀女郎と大伴家持の相聞歌は親しい友人同士の二人が戯れで贈り合ったもので、この歌も家持が本気で紀女郎に恋をしているわけではなく戯れてこのように詠った訳ですね。

大伴家持と紀女郎の二人は頻繁にこのような戯れの歌を交し合っていたようですが、この歌もまたそんな天平時代の貴族の風流な日々の交流が感じられて面白い一首のように思います。


合歓木(ねむのき)は通常は花が散った後に鞘に入った豆状の実を付けます。


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万葉集巻八


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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