万葉集入門
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現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
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(解説:黒路よしひろ)

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庵君諸立(あむのきみもろたち)の歌一首

わが背子が屋戸(やど)の橘花をよみ鳴く霍公鳥見にそわが来(こ)し

巻八(一四八三)
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あなたの家の橘は花が美しく咲くので霍公鳥がやって来て鳴く。それを見にわたしはやって来ました。
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この歌は庵君諸立(あむのきみもろたち)が詠んだ一首です。
庵君諸立については詳しいことはわかっていません。

歌の内容は「あなたの家の橘は花が美しく咲くので霍公鳥がやって来て鳴く。それを見にわたしはやって来ました。」と、宴席に招かれてやって来た家の庭の花橘に霍公鳥の飛び交う様子を誉め讃えた一首となっています。
この頃、貴族の家にはよく橘が植えられていたようで、その花にやって来る霍公鳥の声を愛でながらの宴席が催されたりもしていたようですね。
この歌もそんな宴席での一首で、主の家に咲く花橘の美しさと、そこにやって来る霍公鳥を誉めることで宴席での挨拶歌としています。

「わが背子」とは、基本的には女性が恋人などの親しい男性にたいして呼ぶ言葉ですが、ここでは男性である庵君諸立が宴席の主人に対して親しみを込めてこう表現しています。
はっきりとは詠われていませんが、あるいはこの歌も先の巻八(一四八二)の大伴清繩の歌と同じく、巻八:一四八〇巻八:一四八一の大伴書持の歌が詠まれた時と同じ席での歌だったのかも知れませんね。
だとするとこの「わが背子」は大伴書持(おほとものふみもち)か、あるいはその兄の家持のことなのかも。

庵君諸立と大伴一族の関係などがはっきりしないのですべて想像でしかありませんが、ある初夏の日の貴族たちの楽しげな一日が感じ取れる一首ですよね。


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万葉集巻八


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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