万葉集入門
現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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伊香山野辺(いかごやまのべ)に咲きたる萩見れば君が家なる尾花(をばな)し思ほゆ
巻八(一五三三)
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伊香山の野辺に咲いている萩を見ているとあなたの家の薄が思い出されます。
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この歌も先の巻八(一五三二)の歌と同じく、笠朝臣金村(かさのあそみかなむら)が伊香山(いかごやま)にて詠んだ二首の歌の内のひとつ。
「尾花(をばな)」はススキのこと。
これらの歌が笠金村が石上乙麿(いそのかみのおとまろ)に従って越前の国に向かった時(巻三:三六八 〜 巻三:三六九などを参照)の旅路の歌だとすると、この「君が家」は石上乙麿の家ということになるでしょうか。
(万葉集の時代の「君」は、高貴な身分の相手か、あるいは女性が男性を呼ぶときに使う言葉でした。)
歌の内容は「伊香山の野辺に咲いている萩を見ているとあなたの家の薄が思い出されます。」と、旅路にあって奈良の都の乙麿の家の薄を思い出す望郷の一首となっています。
「萩」も「尾花」も秋を代表する花なので、伊香山の萩を見たことで乙麿の家に咲いていた同じ秋の花である尾花を連想して思い出したのでしょうね。
そんな旅路の不安を故郷を思うことで鎮めようとした望郷の一首なのでしょう。
薄(尾花)。
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万葉集巻八
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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