万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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員外(ゐんぐわい)、故郷(ふるさと)を思(しの)へる両歌

わが盛りいたく降(くた)ちぬ雲に飛ぶ薬はむともまた変若(を)ちめやも

巻五(八四七)
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私の盛りの時は過ぎてしまった。雲の上を飛べるような仙薬を飲んだとしても若返ることはできないだろう
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この歌は「故郷(ふるさと)を思(しの)へる両歌」と題された二首の歌のうちのひとつ。
題詞の「員外(ゐんぐわい)」は付録の意味。

歌の作者はおそらく大宰師の大伴旅人(おほとものたびと)と思われ、旅人が奈良の都にいる吉田宜(よしだのよろし)に「梅花(うめはな)の歌」二十三首(巻五:八一五 〜 八四六までを参照)を贈ったときにこれらの歌も付録として添えたようです。
この時、旅人は「梅花(うめはな)の歌」とともに、「松浦河に遊ぶ」の一篇(巻五:八五三 〜 八六三までを参照)の歌も共に吉田宜に贈ったようですね。

歌の内容は「私の盛りの時は過ぎてしまった。雲の上を飛べるような仙薬を飲んだとしても若返ることはできないだろう」と、なんとも弱気な老境の思いを詠って伝えています。
「梅花(うめはな)の歌」の宴が催されたのが天平二年の正月ということで、旅人がこの歌を詠んだのはそれ以降のことですが、このころはすでに前年に長屋王の変(巻三:四四一を参照)が起こって長屋王は自害。
また旅人は大宰府に来てすぐに妻を亡くしており(巻五:七九三などを参照)、長屋王に近い立場にもあった旅人は私的にも政治的にも心細い立場に居たようです。

そんな心細さがこのような弱音となって、懐かしき故郷の奈良の都にいる吉田宜への歌に表れたのでしょうね。


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万葉集巻五


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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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